
ホラーの深淵と、Y2Kストリートの甘さが、不意に手を取り合った。
伊藤潤二。日本が誇るホラー漫画の巨匠の“世界観”が、韓国発のブランド「NICE GHOST CLUB」の手により再構築され、ファッションへと姿を変えた。その舞台となったのは、ソウル・弘大に構えるMUSINSA STORE。
都市の喧騒の中にひっそりと現れたこのポップアップストアには、どこか“異界”の気配が漂っていた。
“かわいい”の奥にひそむ、“怖い”の輪郭
今回のコラボタイトルは『JUNJI ITO MANIAC × NICE GHOST CLUB』。
モチーフはもちろん、『富江』『うずまき』『死びとの恋わずらい』など、潤二作品の中でもとりわけ耽美で、不気味で、忘れられないものたち。
NICE GHOST CLUBの“遊び心”の中に、伊藤潤二の“ねじれ”が差し込まれることで、どこか無垢で毒々しい服たちが完成した。
ビッグTシャツに富江の瞳。ジップフーディには、螺旋が刻まれる。小さなピンバッジには、首吊り気球が微笑む。
アイテムのひとつひとつが、漫画という枠を超えて“身につけられる異常性”を持ち始めていた。
弘大の街に開いた“ホラーの間口”
2025年4月22日から5月5日まで、MUSINSA弘大ストアで開催されているこのポップアップ。
コンクリート打ちっぱなしの空間に、伊藤潤二の原画が映える。それはギャラリーではなく、“怪異にふれてしまった日常”のような違和感。
展示に加え、10万ウォン以上購入した来場者には「ハート型のハンドミラー」が贈られるという演出も秀逸。持ち歩くには少しだけ奇妙で、しかし捨てられない“不安のかけら”のような存在感。
さらにSNS投稿者の中から抽選で配られる「ピンボタンセット」は、コレクター心をくすぐる中毒性がある。
ホラーとファッション、その交点にある“もうひとつの現実”
伊藤潤二の描くホラーには、“恐怖”以上に“魅了”がある。それはNICE GHOST CLUBのポップさと響き合い、MUSINSAというプラットフォームを介することで、“都市の風景”へと変換された。
これはただのアニメ・マンガコラボではない。これは、“かわいい”の裏に棲む“異常”を、あえて堂々と着るという意思表明だ。
見えない不安を、柄にして。言葉にならない恐怖を、色にして。そして、ファッションは静かにこう告げる。「それでも、纏うことはできる」と。
店舗情報
MUSINSA STORE HONGDAE
住所:ソウル特別市 麻浦区 東橋洞165-4
イベント開催期間:2025年4月22日〜5月5日
営業時間:11時~21時
休業日:年中無休
公式サイト:www.musinsa.com
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